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シティズンとは?

シティズンとは?


 デジタルシティズンシップとは、「デジタル」「シティズン」「シップ」の3つの言葉で成り立っています。デジタルは電子的なもののことを指し、ここではインターネットを意味します。シティズンは日本語では「市民」と訳されますが、後述するように誤解しやすい難しい言葉です。「シップ」は〇〇性や有り様(ありよう)のことで、メンバーシップやスポーツマンシップなど、あるべき姿のことを示す言葉です。

 問題は「市民」の解釈です。この言葉はもともとは「都市部に住む人(住人)」のことでした。前橋市民や東京都民など、自治体に所属する人を指す言葉のうち、市行政区の人を市民、町は町民、県は県民などと呼んでいます。また、一般市民の「市民」も基本的には対象となるすべての人を指し、国民や我々という言い方と等しいと言えます。こうした意味で使われる「市民」を、ここでは「住人」(レジデント Resident)としておきます。
 もう一つの「市民」の意味は、民主的な社会の担い手のことです。都市が発展して生活環境が複雑になると、身の回りのことや地域の問題など行政の手が届きにくい小さな日常の問題が増えてしまいます。そうした問題は自分たちで対処する必要があります。このとき、自分とは直接関係ないことでも当事者意識をもって問題解決に乗り出す人たちが現れ、そうした人たちを「市民(シティズン Citizen)」と呼ぶようになりました。また、こうした人たちが活躍しやすいように行政や企業がサポートする体制をとっている社会を「市民社会」と呼びます。
 おなじ「市民」という言葉でも、「住んでいる人」を指すのか、「住むために自分からすべきこと(=志)」を指すのかによって意味が大きく変わります。
 
これをインターネット利用の姿に当てはめてみると、次のようになります。
 
 ■デジタル機器を使うことが目的の「デジタル住人」
 デジタル住人は端末を扱えるようになることが目的ですので、21世紀に生まれた子ども達がデジタルネイティブであることに「この子はスマホを使いこなしている」と感動します。インターネット利用に関する教育に携わる指導者の中でも、IT業界やデジタル好きの人も、端末を使うこと自体に価値を見出しやすく、使用頻度を増やして何でもデジタルで片付けられる人を「使いこなしている人」と称賛する傾向があります。逆に使用頻度が少ない人、必要性を感じていない人を古いタイプの人と見てしまう傾向もあります。
 生活環境に置き換えて考えてみましょう。都市部の生活は自動改札や無人レジ、交通網、オートロック(セキュリティ)、分刻みの多忙な生活など、田舎に比べてハイテクでスピーディーな生活を送っています。田舎から都市部に越した人はこれらに不慣れなことが多く、無人レジでもたついたり、改札で残高不足に気づいて恥ずかしい思いをするなど生活に支障を感じます。こうした人から見ると、これらを抵抗なくやってのける都会人はうらやましい限りです。デジタル住人の発想は、都会に移り住んだ田舎者と都会の住人(ネイティブ)の違いと同じといえます。
 デジタル住人を推進する指導者の言う「善きネット市民」とは、デジタル端末にコンプレックスを感じている人がそれを克服して、デジタル機器を抵抗なく使いこなす姿そのものを指しているのです。よって、民主主義や社会参画といった高貴な目的について考える機会は限定的となります。
 
 ■善き目的のためにデジタル機器を使う「デジタル市民」
 デジタル市民はもともと市民としての教育(市民教育)を受けた人がインターネットを使う姿です。インターネットを今までとは違う新しい社会活動の空間と考え、その空間における市民の有り様を考える必要に迫られて作られたのがデジタルシティズンシップ教育です。デジタル市民を理解するには、市民(Citizen)とは何かを理解しておく必要があります。当然デジタルシティズンシップ教育も市民教育が土台となるので、インターネットの使用目的は市民性に委ねられることとなります。
 都市の生活に当てはめれば、住民票があって都市生活に慣れているのが住人です。住人のうち、地域や社会をより良くしようと積極的に社会参画する意識がある人が市民です。住み慣れれば住人にはなれますが、住み慣れるだけでは市民にはなれません。市民になるには教育が必要なのです。
 
 ■「善きネット市民」の解釈が重要!
 市民の解釈によって「善きネット市民」の意味が大きく変わってしまいます。ここが日本版デジタルシティズンシップ教育の課題です。例えば「生活のあらゆることをネットで行え、抵抗なく自然とネットサービスを生活に取り入れる消費者」ともなれば「民主主義を支える担い手としてインターネットを活用できる人」にもなるのです。市民(Citizen)は住民の上位に位置するもので、単にネットを使えばよいのではなく、その目的を考えより賢く生きる意思を持つことが重要です。
 このことを意識して「善いネット市民」という言葉を聞くたびに、住人なのか市民なのか見極められるようにしましょう。

 

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