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そもそもの話を知っておこう

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 デジタルシティズンシップ教育が少しずつ認知されるにしたがって、全国で様々な亜種が生まれています。多くの方はこの教育が情報モラルに代わる新しい教科書と期待されていると思われますが、実際には根本的に違います。ということで、今回は「そもそもデジタルシティズンシップ教育とは何か?」について簡単にその成り立ちを説明します。
 
 非常にざっくりといえば、デジタルシティズンシップ教育とは、「西洋版情報モラル教育」のことです。
 指導者の中には「情報モラルは否定的なことしか言わない、端末を使わせない方針で時代に合わない」といった考えから、新しい手法、時代に合った手法としてデジタルシティズンシップ教育を取り入れようとしています。しかし、そのやり方ではカリキュラムや技法などの「教科書」を手にすることができても、結局その目的や指導者の思想は情報モラル教育に根差してしまいます。つまり、上手に使おうよ!と言いながら、それが何を意味するのかわからず「悪いことをしない、危険が多いから気を付けて使う」発想で指導するのです。悪いことをしなければ上手な使い方が残るという消去法的指導は情報モラルそのものです。
 現在のデジタルシティズンシップ教育普及の流れは、思想が日本文化に根差した閉鎖的で、ルールに従うことで安定させる集団主義でありながら、その具体的な手法は多様性・民主主義・自由主義を目指す対話型となっています。対話型によって自由な発想になるかと思われがちですが、指導者が望む対話の目的はルールを守り迷惑をかけない日本文化思想に基づきます。これでは学習のゴールは情報モラルと同じです。
 従来の方法では指導者が一方的に教える形だったのに対し、新しい方法では「学習者に対して指導者が期待する正解を言い当てさせる」ようになるだけです。結果的に従来と変わりません。むしろ従来の手法による抑止効果を弱める一方で、代わりのコントロール方法(合意形成や行動規範の実現方法)が分からない危険な状態となります。「自分で考えよう、話し合おう」と号令をかけながらも、何をどう考えるのか導くことができず、考えること、話し合うこと自体が目的となってしまう意味のない学びになりやすいのです。
 
 そもそも情報教育(昨今のインターネット利用教育全般)の必要性は技術革新による生活環境の変化から始まっています。インターネットは「一人ひとりの声を可視化して共有し世界規模で集合知を形成する」ことができるメディアです。これは現実社会に置き換えると大都市と同じです。大都市では多様性があるため、対話によって問題解決を図る必要があり、コミュニケーションスキルが求められます。そのために情報を科学的かつ論理的に考え伝えるためのリテラシー能力を養い、自分ならどうするか当事者意識をもち、考え行動する実行力が重要になります。こうしたことが実社会で実現できている国や地域には「市民性(シティズンシップ)」が形成されるので、その発展版としてデジタルシティズンシップ教育が行われるのです。
 対して日本社会は基本的に閉鎖的、均一的な集団を好む社会です。村社会や田舎の思想とも言えます。こうした社会では出る杭は打たれるので自己主張は控え、ルールやマナーを守るよう他者に求めます。困ったことがあっても限界までは我慢します。互いに気を使い心豊かに優しく穏やかに過ごす平凡な日々による安定感が安心の礎となります。こうした文化から誕生したのが情報モラル教育です。「異質なものは排除して、勝手なことは許さないことが基本の文化」に、「異質を受け入れ理解し、勝手なことは対話による合意形成を図って解決しようという文化」が入り込むので混乱は必至です。
 
 インターネットはメディアであり、メディアはコミュニケーションのための道具ですので、インターネットの教育といっても、その国のコミュニケーションの文化や思想によって目指すものが大きく変わります。口先だけで新しい言葉や教科書を取り入れようとしても、その教育の背景にある思想や目指す人間像が異なると全く違う指導方法になるのです。
 デジタルシティズンシップ教育を取り入れるのであれば、日本人や日本文化とは何か?インターネットを使う目的は何か?その先にどのような未来を期待するのか、など教育現場や家庭で考えていく必要があります。

 

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