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異文化適応の壁

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異文化適応の壁


 島国日本は外国との交流機会が少ないことから、海外に強い憧れを抱いています。新しい技術やその国の伝統料理など、日本人は実に器用にそれらを自国文化に取り入れてきました。これを「異文化適応」と呼びます。異文化適応の過程では、本来の姿や意味が変えられて、名前だけが残って中身が別物になることがよくあります。料理ではカレーやラーメン、邦楽などが有名です。本来の味や姿を知らない人にとって、異文化適応は特に疑問を持つことはありません。島国日本では海を渡ってはるばる本場の国に行かない限り本物に触れることが無い場合も多々あるため、独自の進化に気付かないまま過ぎてしまうこともよくあります。
 欧米文化から誕生したデジタルシティズンシップ教育もまた、異文化適応の過程を経て日本人の文化や教育思想に適した形に姿を変えながら、日本の学校や地域社会に取り込まれようとしています。
 ■強引な導入方法
 デジタルシティズンシップ教育を導入するにあたり全国で行われているのが情報モラルの否定です。特にあからさまな手法が、情報モラルを単純に時代遅れとみなす方法です。特徴としては、「情報モラルはネット利用を否定することを前提としている」「昭和生まれは時代に取り残されている」「抑止力を強めルールで子ども達のやりたいことを縛るだけの窮屈な教育」といった印象を植え付けます。
 反対にデジタルシティズンシップ教育は「子ども達が自ら考える」「ネット利用を肯定することを前提とする」「善い使い手となることを目指す」など、わかりやすい対比を見せます。こうして優劣をつけることでデジタルシティズンシップ教育を強く推奨するのです。
 日本PTA全国協議会の啓発動画「デジタルシティズンシップ」では、昭和55年生まれの母親と中学3年生の娘の会話を通じて、デジタルシティズンシップ教育について紹介されています。この動画の肝は、ネットやスマホに非常に疎い昭和の人として描かれる母親に対して、娘が非常に賢く映っているコントラストにあります。娘はとてもしっかり者で、学校で学んだデジタルシティズンシップ教育によって、善き手本となるようインターネットを使うことを力説します。まるで学校の授業を受ければこういった子が育つかのような印象さえ受けてしまうほど、親子のギャップが印象的です。
 ■思想までは受け入れられない
 異文化を取り入れる際は形のあるものから理解します。食文化や教科書(キャッチコピーや手法)などは見ればわかるので、真似することが可能です。しかし、目に見えない部分は理解が難しく、特に思想は価値観や政治など社会の根幹に関わるものなので、簡単に理解することはできません。デジタルシティズンシップ教育も海外の論文や教科書を翻訳することができても、その成り立ちや実際の教育環境をすべて模倣したり理解することは困難です。よって、言葉だけ取り入れて思想は日本人の好みに味付けすることになります。例えばこのような解釈がされるということです―デジタルシティズンシップ教育とは、安全に、相手を思いやりながらデジタル機器を活用できるよう、子ども達自身が率先してルールとマナーを守り、行動できるようにするための教育」ー。
 ■善き市民とは?
 善き市民とは、その社会の模範となる人格者のことですので、文化によってそのモデルは変わります。中東ではイスラムの教えに忠実な生活習慣を身につけた人であり、「市民=信者」となります。欧米社会では民主主義を理解し自由と責任を自覚する人となるので「市民=シティズン」です。日本では自己主張を控え空気を読み、ルールとマナーを守り勝手なことをしない人になるでしょうから「市民=住人」です。デジタルシティズンシップ教育を輸入する時は、情報モラルに代わる「世界標準」のインターネット教育と謳い大々的に宣伝しながらも、その中身は別物にになっているのが実態です。
 そもそもデジタルシティズンシップ教育が対話を重視する理由は、普段からあらゆる教科の授業、学校生活全般、家庭(親子関係)、地域などあらゆる領域において、大人と子どもが対等に話し合い合意形成する文化があるためです。ネットを肯定的に捉えるのは、ネットを手段の一つとして考えており、各自がメディア選択をすればよいのであり、ネット利用を否定する理由が無いからです。
 こうした当事者意識や民主的な対話の文化を育むのが、昔から行われているシティズンシップ教育です。背景や基礎を知らないと裸の王様になってしまうので注意しましょう。

 

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